チルゼパチドとは?作用のしくみ・薬物動態・臨床試験を医師監修で解説

チルゼパチドの作用のしくみと薬物動態を解説する記事のアイキャッチ

この記事の要点(30秒でわかる)

  • チルゼパチドはGIP受容体とGLP-1受容体の両方に結合して活性化します
  • インスリン分泌を増やし、グルカゴンを減らします。どちらも血糖に依存した形で起こります
  • 臨床薬理では、15mgで空腹時グルカゴンが28%低下、食後のグルカゴン曝露量が43%低下と報告されています
  • 胃排出の遅れは初回投与後が最も大きく、時間とともに弱まります。吐き気が続かないことが多いのはこのためと考えられます
  • 分子内のC20脂肪二酸がアルブミンと結合し、半減期を約5日まで延ばしています

このページは、チルゼパチドとはの作用機序の部分を、添付文書の記載にもとづいて詳しく見ていくものです。

2つの受容体に作用する

2つの受容体から、はたらきが2系統に分かれます。

チルゼパチド(マンジャロ)はGIP受容体とGLP-1受容体の両方に選択的に結合して活性化する。血糖に対する働きとしてインスリンを出しやすくする、グルカゴンを減らす、インスリンの効きをよくする。体重が減る側のしくみとして胃の内容物が出ていくのが遅くなる、食べる量そのものが減る。受容体が1つ多いことが効きが強いことを意味するわけではない。
チルゼパチドが作用する2つの受容体

チルゼパチドは、GIP受容体とGLP-1受容体に選択的に結合し、活性化します。GIPとGLP-1は、いずれも食事をとったときに消化管から出るホルモン(インクレチン)で、この2つが働きかける受け皿の両方に作用する設計です。

作用する受容体の違い
一般名GIP受容体GLP-1受容体
チルゼパチド
セマグルチド
リラグルチド
デュラグルチド

受容体が1つ多いことが、そのまま「効きが強い」「優れている」を意味するわけではありません。どの薬が合うかは体質・持病・続けやすさによって変わります。

血糖に対する働き

インスリンを出しやすくする

添付文書では、インスリン分泌の第1相・第2相をいずれも増強するとされています。第1相は食事の直後に素早く出るぶん、第2相はそのあと続いて出るぶんです。

グルカゴンを減らす

グルカゴンは、血糖を上げる方向に働くホルモンです。チルゼパチドはこれを下げます。数値も報告されています。

チルゼパチド15mg・28週時点(プラセボは変化なし)
指標変化
空腹時グルカゴン濃度28%低下
混合食後のグルカゴン曝露量(AUC)43%低下

インスリンの効きをよくする

28週間の投与後、インスリン感受性が高まることが専用の検査法(高インスリン正常血糖クランプ法)で確認されたと記載されています。同じ量のインスリンで、より血糖が下がりやすい状態になるということです。

「血糖に依存する」の意味

インスリンを増やす働きも、グルカゴンを減らす働きも、血糖が高いときに働く形で起こります。そのため、この薬を単独で使う場合は低血糖が起こりにくいとされています。

ただしインスリンやSU薬など、他の血糖を下げる薬と併用する場合は低血糖のリスクが上がります。服用中のお薬は必ず診察でお伝えください。

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体重が減る側のしくみ

添付文書には、食事の摂取量を減らし、体重を減少させると記載されています。関わっていると考えられるのが、次の2つです。

胃の内容物が出ていくのが遅くなる

チルゼパチドは胃排出を遅らせます。食べたものが胃にとどまる時間が延びるため、満腹感が続きやすくなります。同時に、食後の血糖の上がり方もゆるやかになります。

この遅れは初回投与のあとが最も大きく、時間とともに弱まっていくと記載されています。始めた直後に吐き気や満腹感が強く、続けるうちに落ち着いてくることが多いのは、この性質と関係していると考えられます。

一方でこの作用は、一緒に飲んだ薬の吸収にも影響しうることを意味します。飲むタイプのピルについてはマンジャロとピルの併用で解説しています。また全身麻酔や深い鎮静を伴う処置の前には、胃の内容物が残ることによる注意が必要とされています。手術のご予定がある場合は必ず事前にお知らせください。

食べる量そのものが減る

添付文書に記載されている作用のひとつが「食事摂取量の減少」で、実際に最も多い副作用にも食欲減退が挙がっています。体重が動くのは、この結果としての面が大きいと考えられます。

なぜ週1回でよいのか

体内にとどまるしくみを図にしました。

マンジャロが週1回でよいのは、チルゼパチドの分子に付いたC20脂肪二酸が血液中のアルブミンと結合し(結合率99%)、分解や排泄を受けにくくなって体内にとどまる時間が延びるため。消失半減期は約5日で、週1回の投与を4週間続けると定常状態に達し、以降は一定の範囲におさまる。
なぜ週1回でよいのか(イメージ図)

チルゼパチドの分子にはC20脂肪二酸が付いており、これが血液中のアルブミンと結合します。アルブミンに結合している間は分解や排泄を受けにくくなるため、体内にとどまる時間が延びます。

項目数値
血漿アルブミン結合率99%
消失半減期約5日
定常状態に達するまで週1回投与を4週間

週1回という用法は、この半減期に合わせて設計されたものです。間隔を空けることの問題は2週間おきでもいい?で解説しています。

代謝と排泄

チルゼパチドはペプチド(アミノ酸のつながり)を骨格とするため、体内ではペプチド骨格のタンパク分解、C20脂肪二酸のβ酸化、アミド加水分解によって分解されます。

できた代謝物は主に尿と便から排泄され、未変化体(分解されないままのチルゼパチド)は尿・便のいずれにも認められないとされています。

また、年齢・性別・人種・民族・体重は、臨床的に意味のある影響を与えないと記載されています。

よくあるご質問

GIPにも作用するぶん、効果が強いのですか?

受容体の数と効果の大きさは別の話です。作用する経路が2つあるという構造上の特徴であり、個々の方にとってどちらが適しているかは体質や持病によって変わります。効果の出方には個人差があります。

単独で使えば低血糖にならないのですか?

血糖に依存して働くため起こりにくいとされていますが、絶対に起こらないという意味ではありません。とくに他の血糖を下げる薬を併用している場合はリスクが上がります。ふらつき・冷や汗・強い空腹感などがあればご連絡ください。

吐き気が減ってきたのは、効かなくなったからですか?

胃排出の遅れは初回のあとが最も大きく、時間とともに弱まるとされています。吐き気が落ち着くこと自体は、効果がなくなったことを意味するものではありません。体重の変化が止まった場合は別の要因も考えられますので、ご相談ください。

腎臓や肝臓が悪くても使えますか?

未変化体は尿・便から出ないとされていますが、持病の内容によって判断は変わります。腎臓・肝臓の疾患がある方は、必ず診察でお伝えください。処方できない場合もあります。

手術や胃カメラの予定があります

胃の内容物が残ることに関する注意が添付文書に記載されています。全身麻酔や鎮静を伴う処置の予定がある場合は、必ず事前に当院と、処置を受ける医療機関の両方にお伝えください。

飲み薬にはできないのですか?

チルゼパチドはペプチドを骨格とするため、そのまま飲むと消化管で分解されてしまいます。注射薬として設計されているのはこのためです。飲むタイプの選択肢については、リベルサスとの違いの記事をご覧ください。

ご検討の前に必ずお読みください

  • マンジャロ(チルゼパチド)は、国内では2型糖尿病の治療薬として承認されている医薬品です。体重管理を目的とした使用は、承認された効能・効果ではない適応外使用にあたります。
  • 体重管理目的の処方は自由診療(保険適用外)で、全額自己負担となります。
  • 当院では国内正規流通品を、提携薬局を通じてお届けします。
  • 本ページの数値は米国添付文書の記載にもとづくものです。作用機序の説明であり、特定の効果を保証するものではありません。
  • 吐き気・便秘・下痢などの消化器症状のほか、まれに急性膵炎・胆のう関連症状などの重大な副作用のリスクがあります。体調に異変を感じた場合は速やかにご相談ください。
  • 効果・副作用の出方には個人差があり、結果を保証するものではありません。食事・運動などの生活習慣との併用が前提です。
  • 諸外国では、体重管理を目的とした同成分(チルゼパチド)の医薬品が承認されています。
  • オンライン診療の結果、医師が適切でないと判断した場合は処方できないことがあります。

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ご自身に合うかは、診察でご確認ください

しくみを知っていただいたうえで、実際に使えるかどうかは体質や持病によって変わります。服用中のお薬がある方はとくに、診察でご相談ください。無理な勧誘はいたしません。

参考文献

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